コンサルティングファームへの就職や転職を検討する際に、コンサル業務の重要な課題の一つである「利益相反」について理解することが重要です。
コンサルプロジェクトの利益相反の巧みなマネジメント
コンサルティングファームでは、利益相反を巧みにマネジメントするバランス感覚が求められます。顧客の利益を過度に優先しすぎると信頼が損なわれ、長期的なビジネスが減少しますが、逆に顧客の要求にすべて応えすぎるとビジネスが成り立たなくなります。
一般的には、利益相反とはコンサルファームが顧客(ここではA社とします)から案件を取りたいが、顧客はその案件を望んでいない場合を指します。どのファームも「クライアントの利益を第一に考える」と掲げていますが、コンサルティングファームもビジネスである以上、収益を上げる必要があります。
市場環境が悪化すると、無理にでも案件を獲得しようとするのが常です。忙しい時期には無駄な案件を売る余裕はありませんが、プロジェクトが少ない時期には、不要な問題点を挙げてその解決策として新たなプロジェクトを提案するインセンティブが働くこともあります。
しかし、これが顧客の不快感を招くと、仕事を打ち切られるリスクがあります。また、リソースを少なくすればコスト削減になりますが、結果的に顧客を満足させられず、「プロジェクト当初と話が違う!」とクレームを受けることもあります。顧客満足度を保ちながら案件を続けることが、シニアマネジャーの腕の見せ所です。
利益相反の問題
利益相反の問題は、コンサルと顧客の間だけでなく、顧客企業内のステークホルダー間にも存在します。例えば、プロジェクトが株主のためのものなのか、トップマネジメントのためのものなのか、あるいは事業部門の部長レベルのためのものなのかで、プロジェクトの性質が異なります。
顧客満足度がクライアント企業の業績向上につながる優れた調査や分析、コンサルティングに基づいていれば良いのですが、単に事業企画部門の部長が知りたいという理由で行われるプロジェクトでは、株主や社長にとっては無駄な投資となります。典型的な例として、決算間近の予算消化目的の世界ベンチマーク調査プロジェクトなどがあります。
長期的な成功のために
長期的に業界で生き残るためには、短期的利益を長期的利益と信頼のために犠牲にできるかどうかが重要です。実際、コンサルや投資銀行で長く成功している人の特徴の一つは、「お客が依頼してきた仕事を、あなたのためにはこれはやらない方が良い」と断ることができることです。
コンサルティング業界でのキャリアを検討する際には、このような利益相反のマネジメントスキルが求められることを理解しておきましょう。