昨今注目を集めている、人的資本。今回は、人的資本とは何か、そしてなぜ人的資本が重要なのかについて説明していきます。
2020年、経産省から「人材版 伊藤レポート」が発表されました。「人材版 伊藤レポート」とは、一橋大学の特任教授である伊藤邦雄氏を座長として作成されたレポートです。
遡ること2014年には、「伊藤レポート」は企業と投資家に大きな影響を与えました。今回のものはその人材版となっており、レポート中ではこれからの人材マネジメントの在り方として、人的資本の重要性が訴えられました。
総理大臣も人的資本について言及
現内閣総理大臣である岸田文雄氏も、人的資本への積極投資を名言しています。岸田氏は以下のようにメッセージを発表しています。
政府は、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現を目指しています。成長と分配の好循環を実現するカギは、経済的豊かさと力強さをもたらす原動力である「人」です。
「人」への投資を進めることで、我が国、そして、世界の経済社会が、グリーンとデジタルをキーワードとして大きく変革する中で、新たな付加価値を創出する力を強化するとともに、次の成長を生み出す人への分配を強化していきます。
こうした考え方の下、人への投資を抜本的に強化するため、3年間で、4000億円の施策パッケージを提供することとし、デジタルなど成長分野への労働移動の円滑化や、人材育成を強力に推進していきます。
今回、この施策パッケージの実現に当たり、働く従業員の方、企業経営に携わる方、研修サービスを提供している方など、多くの関係者の皆さんの声を伺った上で、制度設計を行うこととしました。ぜひ、これまでの発想の枠にとらわれず、積極的な御提案をお寄せ下さい。(参照:首相官邸)
人的資本とは
人的資本とは、デジタル大辞泉では以下のように定義されています。
労働者が身につけた知識・技能・能力などを資本とみなしていう語。教育・訓練・経験によって個人に蓄積され、労働生産性の向上や賃金の上昇などに影響を与える。ヒューマン‐キャピタル。
上にもあるように、人的資本とは英語のHuman Capitalの訳です。文字通り、人を資本として捉えた考え方です。
人的資本という考え方が登場するまで、企業では「人的資源」(Human Resource)という考え方が主流でした。人的資源は、人を資源と捉えて管理する考え方です。そのため、見方によっては人を確保して“消費する”考え方として捉えることもできます。そのため人的資源管理においては、人件費はコストとして考えられてきました。
こうした従来の考え方に対して、人をモノやカネと同様に資本として捉えたのが人的資本の考え方です。個人が身につけている技能や資格、能力などを資本とみなし、長期的な観点から経営に必要な資本として“投資する”ものであると定義したのです。
近年では、投資家も人的資本に注目しており、人的資本に対する企業の取り組みが投資家の投資判断有無に影響を与えています。
人的資本が注目されている背景
グローバル経済における製造業から知識労働への移行
今日、人的資本が注目されている背景として、グローバル経済における企業のビジネスモデルが製造業から知識労働へ移行していることが挙げられます。
従来の社会経済は製造業中心であり、企業が力を入れるのは設備投資による生産拡大・生産性向上や原材料費の削減がメインでした。しかし、近年はITなど無形の財産を用いたビジネスモデルが拡大しています。これらの業態においては、労働者の経験やスキル、または企業が持つノウハウや風土などの人的資本が経営に大きな影響を与え得るのです。
人的資本の開示を義務化する世界的な流れ
人的資本をめぐる世界的な流れとして、2020年8月に米国証券取引委員会が上場企業に対して人的資本に関する情報開示を義務付けたことも挙げられます。
これは投資家からの強い要望により実現しました。投資家にとって、人的資本は企業の将来性を判断する際に重要視する要素であるためです。情報開示の具体的な例として、アメリカの上場企業は人材の採用や育成、維持などについて情報を開示する必要があります。
日本でも人的資本を開示する流れは既に発生しており、アメリカで始まったこの取り組みはいずれ日本含め世界中に広がると予想されます。
ESG投資と人的資本の関係性
近年重要性が高まってきているESG投資との関係性も、人的資本について語る上では欠かせません。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字からなる言葉であり、投資家は財務指標のみならずESGも加味して企業の持続的な成長を判断するようになってきています。
ESGはコンプライアンス遵守と同様に、持続的に取り組むことで企業の将来的な発展にもつながります。そして、ESGのうちのG(企業統治)の中には人的資本への取り組みも含まれており、具体的にはダイバーシティや人材育成などが挙げられます。
人的資本を高めるメリット
投資家の投資意欲向上
人的資本を高める、つまり人に対して投資し人を成長させていくことには、投資家の投資意欲向上につながるというメリットがあります。その理由として、以下の2つが挙げられます。
■ 情報開示により社会的イメージが高まる
■ 生産性が向上し企業価値が高まる
先にも述べた通り、昨今では人的資本に関する情報を開示する流れが世界的に高まっています。具体的には、採用・研修・育成計画などです。従来の財務情報の開示に加え、人的資本についても自社の良い取り組みを開示することで、社会的なイメージが向上し投資家の投資意欲を向上させることにつながります。
また、人的資本へ積極的に投資すれば、基本的に従業員の質は向上します。質の良い従業員は生産性を向上させ、会社により多くの利益をもたらしてくれるでしょう。その利益で更に人的資本に投資できるようになり、好循環が生まれます。つまり、人的資本を高めることにより、企業を持続的に成長させることができ、また企業価値を高めることができるのです。
このように、人的資本を高めることによる社会的イメージ向上と生産性向上の結果として、投資家の投資意欲が向上します。
転職希望者からの信頼性向上
人的資本に関する情報を外部のステークホルダーへ開示するという意味で、その中には転職希望者も対象に入ってきます。
その企業が「人」に対してどのような課題感を持っていて、どのような戦略でその課題に対して対応・改善しているかという情報は、転職希望者自身が次のキャリアを考える上でも重要な要素になってくると思います。
是非とも企業選びの際に、そうした情報が開示されている世の中に早期に実現して、今後のキャリア選択もより良い方向に変化していくことを期待します。
人的資本開示に関するご相談、コンサルティングサービスにご興味のある法人様は下記リンクをご参照ください。
CareerTreeで自分の転職可能性を確認しよう!
CareerTreeで自分の転職可能性を確認しよう!
人的資本について注目が高まるっていることは既に述べた通りです。それと同時に、キャリアデータについてももっと知った上で転職活動を行うには、CareerTreeを活用することも有効です。もちろんCareerTreeではその他にも、あらゆる転職実例データを見ることも可能です。CareerTreeを使うことで、様々な会社へ転職した人の生の情報に触れながら、効率的な転職活動を実現できるでしょう。
また、CareerTreeでは、志望企業の転職情報を収集できるだけでなく、今働いている企業を起点とした転職データを見ることもできます。例えば「現在の勤め先から志望企業に転職した人はいるのか」「志望企業へ転職した人は、他にどのような企業を受けたのか」という情報も見ることが可能です。
CareerTreeであれば、オンラインで手軽に、かつ充実したリアルな転職実例の情報収集が可能です。加えて、ひとりひとりの希望やバックグラウンドを加味した上での転職実例を紹介いたします。
下記の登録ボタンから、メールアドレスとキャリアデータ(大学、企業名、職種など)を登録いただければ、無料でご利用いただけます。
まとめ
ここまで、人的資本とは何か、人的資本がなぜ重要なのかなど、転職活動にあたって押さえておくべき情報を紹介しました。
企業の人的資本に対する考え方をしっかりと理解し、転職を成功させたい方は、まずは転職の正しい情報を知ることが重要です。CareerTreeに登録することで、最新の転職データや採用事情を知ることができます。
ぜひこうした情報にも着目して、ご自身のキャリア選択に活かしてみてください。CareerTreeを上手に活用しながら、転職活動を進めていきましょう。
登録は無料です。
あなたの転職活動に、CareerTreeのサービスをご活用ください。