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有価証券報告書の平均年収の見方:提出会社と連結の差【2026年】

更新 2026年11月2日|執筆 転職ツリー編集部

結論

有価証券報告書の平均年収は提出会社の従業員の値で、日立製作所の995万円(2026年3月期、有価証券報告書)は連結287,901人のうち25,934人の平均にすぎない。賞与と基準外賃金を含む額で、各社の注記と人数・平均年齢を合わせて読む。

想定読者25〜45歳・年収450〜900万円・企業の年収を有価証券報告書で調べて転職先を比べたい人、面接で希望年収の根拠を数字で示したい人

有価証券報告書の「平均年間給与」は提出会社(報告書を出した会社そのもの)の従業員の平均で、連結全体の値ではない。日立製作所の995万円(2026年3月期、有価証券報告書)は、連結287,901人のうち提出会社25,934人、約9%の人の平均である。賞与と基準外賃金を含む額で、人数・平均年齢・注記と合わせて読む。

有価証券報告書の「平均年間給与」とは何か

有価証券報告書は上場企業などが事業年度ごとに金融庁へ提出する法定の書類で、EDINETで読める。「従業員の状況」に提出会社の従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与が載る。

平均年間給与は、各社の注記では「賞与及び基準外賃金を含む」とされる(東京エレクトロン・ファナック・日立製作所の2026年3月期 有価証券報告書)。基本給に残業代などの基準外賃金と賞与を合わせた額である。除外項目は会社ごとに違い、東京エレクトロンは「ストックオプションによる株式報酬費用は除く」と注記し、ファナックは臨時従業員1,160人を外数で示す(同)。

2026年3月期から変わった3点

金融庁は2026年2月20日に開示府令を改正し、2026年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から人的資本の開示を広げた(金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」公布)。

  1. 「従業員の状況」の記載位置が「第1 企業の概況」から「第4 提出会社の状況」の「5 従業員の状況等」に移った。
  2. 提出会社の平均年間給与の対前事業年度増減率が載る。日立製作所は+3.5%、東京エレクトロンは1.9%増、ファナックは1.7%減(いずれも2026年3月期 有価証券報告書)。
  3. 持株会社(主として子会社の経営管理を行う会社)は、従業員数が最も多い連結子会社(最大人員会社)の従業員数・平均年齢・平均勤続年数・平均年間給与・増減率も記載する。給与等の決定方針も記載事項になった。

提出会社と連結の人数を並べる

提出会社が連結の何割を占めるかで、同じ平均年収の意味が変わる。転職ツリーの企業ページの2026年3月期(ベイカレントは2026年2月期)の値を並べる。

企業 提出会社の従業員数 平均年間給与 連結従業員数 併記している子会社の値
キーエンス 3,306人 2,178万円 12,784人 —
東京エレクトロン 2,309人 1,380万円 20,236人 —(中途採用はグループ各社)
ファナック 4,842人 1,144万円 10,040人 —
日立製作所 25,934人 995万円 287,901人 —
野村ホールディングス 204人 1,421万円 28,677人 野村證券 11,076人・1,325万円
リクルートホールディングス 130人 1,162万円 45,586人 株式会社リクルート 11,776人・764万円
SOMPOホールディングス 489人 1,260万円 — 損害保険ジャパン 20,086人・742万円
ベイカレント 866人 1,331万円 6,788人 子会社の給与は非開示

キーエンスは提出会社3,306人が連結12,784人の4分の1を占め、事業の中心が本体にある。日立製作所の提出会社は連結の約9%で、グループ会社に入れば別の会社の給与になる。東京エレクトロンは本体が連結の約1割で、新卒採用は本社、中途採用はグループ各社で行う(公式サイト「人材」)。

持株会社の平均は誰の給与か

持株会社の提出会社は経営管理を担う少人数で、平均は事業会社より高く出やすい。野村ホールディングスの1,421万円は204人の値で、野村證券11,076人の平均は1,325万円。リクルートホールディングスの1,162万円は130人の値で、株式会社リクルート11,776人は764万円。SOMPOホールディングスの1,260万円は489人の値で、損害保険ジャパン20,086人は742万円である(いずれも2026年3月期 有価証券報告書)。

転職先が子会社なら受け取るのは子会社側の給与で、持株会社の平均を目安にすると500万円以上ずれることがある。2026年3月期以後の報告書では、持株会社の表の下に最大人員会社の行を探す。

推移を見るときの落とし穴:母集団が変わる

5期分を並べるときは、同じ集団の値かを先に確かめる。ベイカレントは2024年9月に持株会社体制へ移り、提出会社の平均は2024年2月期の1,074万円(4,321名)から2025年2月期の1,350万円(593名)へ上がった。同じ人の給与が上がったのではなく集団が変わった結果で、全社平均として比べられる最後の値は1,074万円である。

業績連動の賞与も推移を揺らす。東京エレクトロンの平均は、売上高が17.1%減った2024年3月期に1,399万円から1,273万円へ9.0%下がった(各期の有価証券報告書、2025年3月期 決算短信)。キーエンスの平均は年4回の業績賞与を含み、売上高が伸びた2024年3月期・2025年3月期にも下がった。

平均年齢・平均勤続年数・中途採用比率と合わせて読む

平均年間給与は、その平均年齢・勤続年数の集団が受け取る額である。キーエンスの2,178万円は平均年齢35.0歳・平均勤続年数11.3年、日立製作所の995万円は42.2歳・18.1年、ファナックの1,144万円は40.0歳・15.3年の集団の値(いずれも2026年3月期 有価証券報告書)。

中途入社で届くかは、採用の構成で見る。日立製作所は正規雇用労働者の中途採用比率を2025年度52%と公表し(公式サイト、2026年4月1日公表)、理論年収も担当者クラス約530万〜800万円、課長クラス約1,150万〜1,500万円と公開している。東京エレクトロンの36.5%(2025年度)はグループ各社の合算値、ファナックは法定の公表が見当たらず、有価証券報告書に「正社員に占める経験者採用者の割合は約4分の1」とあるのみである。

物差しは日本の給与所得者の平均給与487万円、正社員559万円(国税庁「民間給与実態統計調査」令和7年分、2026年9月公表。日本の平均年収は487万円)。

EDINETで確かめる手順

  1. 金融庁のEDINETの書類検索で、提出者名に正式社名、書類種別に有価証券報告書を指定する。
  2. 目次から「従業員の状況」を探す。2026年3月31日以後に終了する事業年度の報告書では「第4 提出会社の状況」の「5 従業員の状況等」にある。
  3. 連結と提出会社の従業員数を見比べ、提出会社が連結の何割かを出す。持株会社なら最大人員会社の行を探す。
  4. 注記で就業人員か在籍人員か、出向者・臨時従業員、賞与・株式報酬の扱いを確かめ、前期の報告書と従業員数・注記を比べる。人数が大きく変わっていれば会社分割・合併・持株会社化の記載を探す。

面接・年収交渉での使い方

希望年収の根拠に使うときは、「提出会社◯人の平均◯万円、平均年齢◯歳」と人数と年齢まで添える。ベイカレントのように集団が変わった会社では、持株会社化前の2024年2月期の1,074万円と当時の平均年齢31.4歳を組み合わせて示す(企業ページ)。

募集要項に金額レンジがある会社では平均ではなくそのレンジを根拠にする。交渉の進め方は年収交渉の相場、面接で数字を確認する聞き方は転職面接の逆質問例に。

出典・データの取り方

  1. 金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布(2026年2月20日):「従業員の状況」を第4 提出会社の状況へ移動、平均給与の対前年比増減率、最大人員会社、従業員給与等の決定方針の記載。2026年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書から適用
  2. 金融庁 企業内容等の開示に関する内閣府令等の改正(説明資料、2026年3月30日):最大人員会社について従業員数、平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与(賞与を含む。)及び平均年間給与の対前年比増減率を記載
  3. 日立製作所 有価証券報告書 第157期(2026年3月期、EDINET):提出会社25,934人・平均年齢42.2歳・平均勤続年数18.1年・平均年間給与9,949,714円(+3.5%)、連結287,901人(提出会社は約9%)
  4. 東京エレクトロン 有価証券報告書 第63期(2026年3月期、EDINET):提出会社2,309人・43.1歳・14.7年・13,804,159円(1.9%増)、連結20,236人。注記「ストックオプションによる株式報酬費用は除く」。2024年3月期12,727,766円(前期13,989,546円、9.0%減)は第59〜62期の有価証券報告書(EDINET原文転載 https://edinetdb.jp/company/E02652/text?fy=2024)
  5. 東京エレクトロン 2025年3月期 決算短信:2024年3月期 売上高1,830,527百万円(前期比17.1%減)
  6. ファナック 有価証券報告書 第57期(2026年3月期、EDINET):提出会社4,842人[臨時従業員1,160人は外数]・40.0歳・15.3年・11,444千円(△1.7%)、連結10,040人。「正社員に占める経験者採用者の割合は、約4分の1」
  7. キーエンス(転職ツリー 企業ページ、有価証券報告書 第57期 2026年3月期の値):提出会社3,306人・平均年齢35.0歳・平均勤続年数11.3年・2,178万円、連結12,784人。業績賞与年4回、売上高が伸びた2024年3月期・2025年3月期にも下がった
  8. 野村ホールディングス(転職ツリー 企業ページ、有価証券報告書 第122期 2026年3月期の値):提出会社204人・1,421万円、連結28,677人。野村證券11,076人・1,325万円
  9. リクルートホールディングス(転職ツリー 企業ページ、有価証券報告書 第66期 2026年3月期の値):提出会社130人・1,162万円、連結45,586人。株式会社リクルート11,776人・764万円
  10. SOMPOホールディングス(転職ツリー 企業ページ、有価証券報告書 第16期 2026年3月期の値):提出会社489人・1,260万円。損害保険ジャパン20,086人・742万円
  11. ベイカレント(転職ツリー 企業ページ、有価証券報告書 2026年2月期の値):提出会社866人・1,331万円・平均年齢31.3歳、連結6,788人。2024年2月期1,074万円(4,321名、平均年齢31.4歳)→2025年2月期1,350万円(593名)、2024年9月に持株会社体制へ移行
  12. 日立製作所 公式サイト キャリア採用(中途採用比率の公表・理論年収):正規雇用労働者の中途採用比率 2025年度52%(2026年4月1日公表)。理論年収 担当者クラス約530万〜800万円・課長クラス約1,150万〜1,500万円
  13. 東京エレクトロン 公式サイト サステナビリティ「人材」中途採用比率の公表:2025年度 中途採用比率36.5%。「新卒採用は本社にて、中途採用はグループ各社で活動」
  14. 国税庁 令和7年分 民間給与実態統計調査 報道発表資料(2026年9月):1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与487万円、正社員559万円
更新履歴
2026年11月2日初出